カテゴリー: 社会保険診療報酬の所得計算の特例

収入金額の内訳 | 概算経費の計算手順-1

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

歯科医院を支援する公認会計士・税理士が歯科医院の税金や節税について解説します。

今回は、所得計算の特例(租税特別措置法第26条)における概算経費の計算手順1として収入金額の内訳について説明したいと思います。

 

 

概算経費の計算手順

所得計算の特例(租税特別措置法第26条)を適用するためには、次の金額の差額を計算して

  • 所得計算の特例によって概算で計算した保険診療分の必要経費の金額
  • 実際に発生した保険診療分の必要経費の金額

その差額を措置法差額として青色申告計算書(白色申告の場合は収支内訳書)に記載する必要があります。

 

措置法差額は、「青色申告決算書付表<医師及び歯科医師用>」を用いて次のような手順で計算します。(青色申告者の場合)

  1. 収入金額の内訳
  2. 自由診療割合の計算
  3. 自由診療分の実際に発生した必要経費の計算
  4. 保険診療分の実際に発生した必要経費の計算
  5. 保険診療分の概算で計算した必要経費の計算
  6. 措置法差額の計算

 

 

収入金額の内訳

「青色申告決算書付表<医師及び歯科医師用>」の「収入金額の内訳」は次のように記載します。

歯科医師用の青色申告決算書付表(収入金額の内訳)

 

 

社会保険診療報酬

社会保険診療報酬は、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会などの請求先ごとに、次のものを記載します。

  • 診療件数
  • 診療実日数
  • 決定点数
  • 税引前の振込額

 

「①基金事務所から支払を受ける社会保険診療報酬」には、生活保護法、精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)等のそれぞれの適用を受けているものを記載します。ただし、一般社会保険、国民健康保険又は介護保険と併用している場合には、一般社会保険、国民健康保険又は介護保険のそれぞれの欄に記載します。

 

「②国民健康保険診療報酬」には、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)等の適用を受けているものを記載します。

 

「④その他」には、①~③に当てはまらないものを記載します。

 

「診療実日数」は、
外来患者の場合には通院の日(回)数
入院患者の場合には入院した日数
を記載します。
同じ患者さんが1日に2回通院する場合であっても1日(回)として計算します。
同じ患者さんに対して同じ日に自由診療と社会保険診療を行った場合には、それぞれの診療実日数として計算します。

 

「診療報酬当座口払込額」には、所得税・復興特別所得税が源泉徴収される前の金額を記載します。
「診療報酬窓口収入金額」欄には、社会保険診療報酬のうち患者さんから窓口で収入すべき金額を記載します。窓口収入の全部また一部について、未収又は受け取らないこととしたものがある場合でも、「収入すべき金額」として収入金額に含めます。

 

 

自由診療の収入等

自由診療の収入等には、診療収入などのうち、社会保険診療報酬以外のものについて、次のものを記載します。

  • 診療件数
  • 診療実日数
  • 収入金額

 

「一般の自由診療」には、一般の自由診療収入のほか、室料差額収入、健康診断料(人間ドック、生命保険会社との契約による診断料)、母子保健法に基づく検診料、介護保険法に基づく主治医意見書作成料などを記載します。

 

「高齢者医療確保法」には、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査の検診料、特定保健指導の指導料を記載します。

 

 

雑収入

医業に関連する次のような収入は、事業所得における雑収入になります。例えば次のようなものが該当します。

  • 貸与寝具、貸与テレビ、洗濯代等
  • 医薬品の仕入れリベート
  • 患者からの謝礼金等
  • 電話使用料、自動販売機等の手数料
  • 治療器具等の販売収入
  • 地方自治体から支給される休日夜間診療等の嘱託料

この欄にはその雑収入の合計の金額を記載します。

 

 

おわりに

税理士をお探しの歯科医師先生や歯科医院・医療法人の方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある税理士法人インテグリティにお声がけください。歯科医院特有の会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い公認会計士・税理士が、歯科医院が持続的に成長するお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
歯科医師先生や歯科医院のお役に立てる情報があるかもしれないので、こちらの情報の一覧もご覧になってみてください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

所得計算の特例を適用するための準備 | 概算経費-4

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

歯科医院を支援する公認会計士・税理士が歯科医院の税金や節税について解説します。

今回は、所得計算の特例(租税特別措置法第26条)を適用するために必要になる準備について説明したいと思います。

 

 

所得計算の特例は面倒です

所得計算の特例において、社会保険診療収入にかかる必要経費を、実費ではなく概算によって計上することは、小規模な歯科医院の事務作業の負担を減らすことなどが目的になっています。

しかし、実際に所得計算の特例を適用する場合は、事務作業の負担が減るどころか、前段階の準備として会計帳簿により細かい情報を記入することが必要になり、その会計帳簿をもとに非常に面倒で大変な計算をしなければなりません。

そのため、所得計算の特例を適用するにあたっては、顧問税理士とよく相談して、日々の会計帳簿への記帳方法や必要書類について検討してください。

 

 

所得計算の特例の準備

所得計算の特例を適用するための準備として

歯科医業にかかる全ての収入(総収入金額)を次の3つに区分して

  • 社会保険診療収入
  • 自由診療収入
  • その他の収入(雑収入)

歯科医業にかかる全ての費用(必要経費)を次の3つに区分する必要があります。

  • 社会保険診療収入にかかる経費
  • 自由診療収入にかかる経費
  • その他の収入(雑収入)にかかる経費
  • 上記に共通する経費

収入を区分することはそれほど大変ではないと思いますが、
費用を区分することはとても面倒で間違いやすい作業になります。

 

 

所得計算の特例の計算

上記のように総収入金額と必要経費についての区分ができたら、

社会保険診療収入については、所得計算の特例を適用して、実際に発生した経費の代わりに概算経費率を使って計算した概算による経費を必要経費の金額として、

自由診療収入と雑収入については、実際に発生した経費を必要経費の金額とします。

その後は通常通り所得金額を計算していくことになります。

 

 

おわりに

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所得計算の特例の社会保険診療報酬の範囲と総収入金額の範囲 | 概算経費-3

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

歯科医院を支援する公認会計士・税理士が歯科医院の税金や節税について解説します。

今回は、所得計算の特例(租税特別措置法第26条)における社会保険診療報酬の範囲と総収入金額の範囲について説明したいと思います。

 

 

所得計算の特例の適用条件

個人開業の歯科医師先生が所得計算の特例(租税特別措置法第26条)を適用するためには次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 1年間の社会保険診療収入が5,000万円以下
  • 1年間の事業所得にかかる総収入金額が7,000万円以下

よって社会保険診療収入の範囲と総収入金額の範囲が重要になってきます。

 

 

所得計算の特例の対象になる社会保険診療報酬の範囲

所得計算の特例の対象になる社会保険診療報酬の主な範囲は、次の法律などに基づく給付又は医療、介護、助産若しくはサービスになります。

  • 健康保険法
  • 国民健康保険法
  • 船員保険法
  • 国家公務員共済組合法
  • 地方公務員等共済組合法
  • 私立学校教職員共済法
  • 母子保健法
  • 児童福祉法
  • 生活保護法
  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
  • 介護保険法 など

所得計算の特例の対象になる社会保険診療報酬の範囲には、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会などから支払いを受ける部分だけでなく、いわゆる患者さんの自己負担額部分についても含まれるので注意して下さい。

 

 

総収入金額の範囲

所得計算の特例の適用を判定する際の総収入金額は、次の3つの合計金額になります

  • 上記の社会保険診療収入
  • 自由診療収入
  • 雑収入

 

ただし、次の金額については、医業活動から経常的に発生する収入ではないため、所得計算の特例の適用を判定する際の総収入金額には含めないこととされています。
(租税特別措置法関係通達(法人税編)67-2の2を準用)

  • 国庫補助金、補償金、保険金その他これらに準ずるものの収入金額
  • 固定資産又は有価証券の譲渡に係る収益の額
  • 受取配当金、受取利子、固定資産の賃貸料等営業外収益の額
  • 貸与寝具、貸与テレビ、洗濯代等の収入金額
  • 医薬品の仕入れ割戻しの金額
  • 電話使用料、自動販売機等の手数料に係る収入金額
  • マスク、歯ブラシ等の物品販売収入の額

 

 

おわりに

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所得計算の特例でどのくらい節税になるのか | 概算経費-2

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

歯科医院を支援する公認会計士・税理士が歯科医院の税金や節税について解説します。

今回は、所得計算の特例を適用することでどれくらい節税になるのかについて説明したいと思います。

 

 

社会保険診療報酬の所得計算の特例とは

一定の要件を満たす歯科医師先生は、社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用することによって、社会保険診療報酬に対応する必要経費を、実際発生額ではなく、概算額で計上することができます。

社会保険診療報酬の所得計算の特例(租税特別措置法第26条)の概要についてはこちら
所得計算の特例(租税特別措置法26条)の基礎 | 概算経費-1

 

 

所得計算の特例による節税額

所得計算の特例においては、実際に発生した必要経費の金額よりも概算で計上した必要経費の金額が大きい場合に節税になります。その差額が大きいほど節税額も大きくなります。

所得計算の特例を適用することよって節税することができる金額は、社会保険診療収入や実際に発生している必要経費の大きさなどによって異なってきますが、かなりの節税額が見込まれる歯科医師先生も少なくありません。

 

 

節税額の例

実際に数字を使って、所得計算の特例を適用することによって、どれくらいの節税になるのかを見てみます。

個人開業の歯科医院を開院しているA歯科医師先生の場合

平成✕1年における
社会保険診療収入は2,800万円
社会保険診療収入に対して実際に発生した経費は1,700万円
(自由診療収入などはゼロであったとします)
でした。

 

通常の方法による実際発生経費で税金を計算した場合
2,800万円 - 1,700万円 = 1,100万円
もうけである 1,100万円 にかかってくる
所得税は 209万円
住民税は 110万円
合計で 319万円

 

所得計算の特例を適用して概算経費で税金を計算した場合
概算経費 = 2,800万円 ✕ 70% + 50万円 = 2,010円
2,800万円 - 2,010万円 = 790万円
もうけである 790万円 にかかってくる
所得税は 118万円
住民税は 79万円
合計で 197万円

通常の方法に比べて、所得計算の特例を適用して概算経費で計上した方が、所得税と住民税の合計で122万円も税金が安くなりました。

 

 

おわりに

租税特別措置法第26条の社会保険診療報酬の所得計算の特例をまだ適用していない歯科医師先生は、ぜひ次の確定申告での適用を検討してみてください。

税理士をお探しの歯科医師先生や歯科医院・医療法人の方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある税理士法人インテグリティにお声がけください。歯科医院特有の会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い公認会計士・税理士が、歯科医院が持続的に成長するお手伝いをさせて頂きます。

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今回は、個人開業の歯科医師先生が使える節税効果の大きい社会保険診療報酬の所得計算の特例(租税特別措置法26条)の基礎について説明したいと思います。

 

 

社会保険診療報酬の所得計算の特例

歯科医師先生の事業所得の金額は、次のように計算するのが原則です

総収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額

 

しかし、一定の要件を満たす歯科医師先生の場合は、社会保険診療報酬に対応する必要経費について、実際に発生した経費金額ではなく、社会保険診療報酬に所定の概算経費率を乗じて計算した概算の経費金額にすることができます。

この特例は租税特別措置法26条において「社会保険診療報酬の所得計算の特例」として定められています。

歯科医師の必要経費 社会保険診療収入 自由診療収入等
原則 実際に発生した金額 実際に発生した金額
措置法26条の特例 概算による金額 実際に発生した金額

 

 

社会保険診療報酬の所得計算の特例の要件

租税特別措置法26条の「社会保険診療報酬の所得計算の特例」の適用を受けるためには、次の2つの要件をともに満たす必要があります。

  • 1年間の社会保険診療収入が 5,000万円以下 である
  • 自由診療収入なども含めた1年間の総収入金額が 7,000万円以下 である

歯科医師先生によっては自由診療収入が多額になる場合が少なくないため、上記2つ目の要件を満たすかどうか注意してください。

 

 

概算経費率

「社会保険診療報酬の所得計算の特例」を適用した場合は、社会保険診療収入にかかる必要経費について、実際に発生した金額の代わりに、次の算式によって計算した概算経費金額を用います。

社会保険診療収入 ✕ 概算経費率 + 加算額 = 概算経費金額

 

概算経費率と控除額は社会保険診療収入の大きさに応じて下表の数値を使います。

社会保険診療収入 概算経費率 加算額
2,500万円以下 72% なし
2,500万円超 3,000万円以下 70% 50万円
3,000万円超 4,000万円以下 62% 290万円
4,000万円超 5,000万円以下 57% 490万円
5,000万円超 適用できない

 

例えば、社会保険診療収入が3,500万円の場合の概算経費は次のように計算します。

概算経費金額 = 3,500万円 ✕ 62% + 290万円 = 2,460万円

社会保険診療収入にかかる必要経費が2,460万円未満であったとしても、2,460万円を必要経費として計上することができるのです。

 

 

おわりに

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