はじめに
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。
歯科医院を支援する公認会計士・税理士が歯科医院の会計や税金について解説します。
今回は、従業員に対する診療を行って窓口自己負担分を受け取らなかった場合の会計税務処理について説明したいと思います。
家族を診察した場合についてはこちら
家族に対する診療(自家診療)で窓口負担分を免除したときの会計税務処理
取引先の業者さんを診察した場合についてはこちら
取引先の業者さんに対する診療で窓口負担分を免除したときの会計税務処理
友人や知人を診察した場合についてはこちら
友人や知人に対する診療で窓口負担分を免除したときの会計税務処理
歯科医院における自家診療とは
歯科医師が、家族や従業員に対して、診察して治療を行うことを「自家診療」といいます。
自家診療を行った場合、他の患者さんと同じように、家族や従業員からも窓口で自己負担分を受け取っていれば問題ありません。
しかし、本来であれば窓口で受け取るべきである自己負担分ですが、実際は、家族や従業員から自己負担分を受け取ることは少ないのではないでしょうか。つまり、自己負担分の値引き・免除をしていることになっていると思います。
この自家診療の値引き・免除について、正しく会計処理を行わないと、後の税務調査で問題になる場合があります。
自家診療と保険診療
自家診療が保険診療として認めるかどうかは、加入する医療保険制度の保険者によって異なります。
例えば、
- 家族や従業員が、社会保険に加入している場合は、自家診療も保険請求できます。
- 家族や従業員が、医師国保に加入している場合は、自家診療は保険請求できません。
従業員に対する診療
従業員や従業員の家族に対して診療を行って、窓口自己負担分を受け取らなかった場合の会計処理は次のようになります。
従業員が医師国保に加入している場合
従業員が医師国保に加入しているため、従業員に対する自家診療の保険請求できない場合で、診療を受けた従業員から窓口自己負担分を受け取らなかった場合には、本来なら受け取るべきである窓口自己負担分を診療窓口収入として計上して、福利厚生費で処理します。
借方 | 貸方 | ||
福利厚生費 | ××円 | 国保窓口収入(売上) | ××円 |
従業員が社会保険に加入している場合
従業員が社会保険に加入しているため、従業員に対する自家診療についても保険請求できる場合で、診療を受けた従業員から窓口自己負担分を受け取らなかった場合には、本来なら受け取るべきである窓口自己負担分を社保窓口収入として計上して、福利厚生費で処理します。
借方 | 貸方 | ||
福利厚生費 | ××円 | 社保窓口収入(売上) | ××円 |
保険請求分については、他の一般の患者さんの分と合わせて、月末にまとめて計上します。
従業員に対する自家診療の金額が大きい場合
常識的な範囲を超えて従業員に対して自家診療を行った場合や、毎回特定の従業員についてのみ自家診療を行っている場合は、福利厚生費ではなく、診療を受けた従業員に対する給与であるとみなされるおそれがあるので注意してください。
給与とみなされてしまうと、その従業員から源泉徴収する源泉所得税の金額も変わってきます。
従業員に対する自家診療が給与とみなされないように、次の2点に気をつけてください。
- 常識的な範囲での診療にとどめる
- 全ての従業員が一律に自家診療を受けられることを証明するために院内規定などを定めておく
おわりに
家族や従業員に対する自家診療は、税務調査において調査官が目を光らせるポイントになります。お金を受け取っていないから何も処理しないのではなく、しっかりと会計処理を行ってくださいね。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。