医療法人形態の歯科医院の平均的な経営状況

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

歯科医院を支援する公認会計士・税理士が税金や節税について解説します。

 

今回は、医療法人の歯科医院の平均的な経営状況について説明します。

個人開業の歯科医院については下記を参照ください。
個人開業形態の歯科医院の平均的な経営状況

 

 

医療法人の歯科医院の経営状況

厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会による、2013年11月の医療経済実態調査(医療機関等調査)報告によると、医療法人の歯科診療所における平均的な経営状態として、下表のとおり報告されています。

 

医療法人の歯科診療所の経営状況 2012年
金額 割合
百万円
Ⅰ 医業収益 75.7 99.9
1 保険診療収益 59.1 78.1
2 労災等診療収益 0.1 0.1
3 その他の診療収益 15.6 20.6
4 その他の医業収益 0.9 1.2
Ⅱ 介護収益 0.1 0.1
1 居宅サービス収益 0.1 0.1
2 その他の介護収益 0.0 0.0
Ⅲ 医業・介護費用 70.6 93.3
1 給与費 40.3 53.1
2 医薬品費 1.0 1.3
3 歯科材料費 5.9 7.8
4 委託費 5.5 7.3
5 減価償却費 3.5 4.7
(うち建物の減価償却費) 0.4 0.5
(うち医療機器の減価償却費) 1.8 2.3
6 その他の医業費用 14.4 19.1
Ⅳ 損益差額 ( Ⅰ + Ⅱ - Ⅲ ) 5.1 6.7
 Ⅴ 税金
 Ⅵ 税引後の総損益差額 ( Ⅳ - Ⅴ )
平均ユニット数 4

 

割合は「Ⅰ 医業収益」と「Ⅱ 介護収益」の合計金額に対する各項目の割合です。
上表には、いわゆる一人医療法人の歯科医院も含まれています。

 

歯科診療所の損益における各項目の内容
Ⅰ 医業収益
 1.保険診療収益 入院患者・外来患者の医療に係る収益(医療保険、公費負担医療)
 2.労災等診療収益 入院患者・外来患者の医療に係る収益(労災保険、自賠責等)
 3.その他の診療収益 自費診療収益など
 4.その他の医業収益 学校医・産業医・当番医の手当、健康診断、各種検診、文書料等の収益
その他(受取利息、配当金、補助金など)
Ⅱ 介護収益
 1.居宅サービス収益 居宅サービスに係る収益
 2.その他の介護収益 前記の科目に属さない介護収益
Ⅲ 医業・介護費用
 1.給与費 職員の給料、賞与、退職金、法定福利費
(注:歯科医院開設者の報酬相当分は含まない)
 2.医薬品費 費消した医薬品の購入額
 3.歯科材料費 費消した歯科材料、診療材料、医療消耗器具備品等の額
 4.委託費 歯科技工、医療用廃棄物、医療事務等の委託費
 5.減価償却費 建物、建物附属設備、医療機器、車両等の減価償却費
 6.その他の医業費用 経費(福利厚生費、消耗品費、水道光熱費、賃借料、事業税、固定資産税など)
その他(支払利息、雑費等)
Ⅳ 損益差額 (Ⅰ+Ⅱ-Ⅲ)
Ⅴ 税金  法人税、法人住民税(都道府県民税、市町村民税)
Ⅵ 税引後の総損益差額 (Ⅳ-Ⅴ)

 

医業収益は76百万円で、そのうち78%は保険診療収益になっています。
その他の診療収益(自由診療など)の割合が21%と高くなっています(個人開業の歯科医院は14%)

歯科ユニットチェアの数は平均4台なので、単純計算で歯科ユニットチェア1台あたり19百万円の医業収益を稼いでいることになります。個人開業の歯科医院では、歯科ユニットチェア1台が稼ぐ医業収益は14百万円であったので、医療法人の方が効率的に収益を稼いでいるといえます。

 

医業費用は71百万円で、医業収益に対する割合は93%、医業費用の中では給与費(人件費)の割合が高くなっています。個人開業の歯科医院に比べて医業費用の割合が非常に大きくなっていますが、これは院長先生の報酬も含まれているためです。

 

法人としての最終的な儲けにあたる税引後の総損益差額は4百万円になっています。
この4百万円を、設備投資や借入金の返済などに充てることになります。

 

 

おわりに

調査報告では、歯科医院でも個人開業形態の診療所と医療法人形態の診療所を比べると、損益の比率に差が出ており、医療法人の方が経営状態は良いという結果が出ています。個人開業に比べると医療法人の規模が大きいため様々な効率化を行うことができる、そもそも経営への関心が高い歯科医師先生が医療法人化しているなどが要因として考えられます。

 

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。